県境を跨がない岐阜県の最高峰
笠ヶ岳は県境を除く単独峰として岐阜県の最高峰です。標高は2,898mで「日本百名山」ですので、知らない人は少ないかもしれません。
傘を大きく開いたような個性的な形で、ほんとに良い山容をしています。私が登山にはまってから最初に登った山で、途中棄権という憂き目を見た山ですので強烈に覚えています。とにかく傘新道はとても急登で。1500mの標高差を一気に登る登山道です。
槍ヶ岳と同様にどこから見てもハッキリと分かる山容は岐阜県側から見たランドマーク的な存在。信仰の山としての歴史は古く1683年に円空上人が開山。その後、播隆上人が1823年に再興した。
登山ルートは
起点は新穂高温泉になります。私がよく使うルートとしては、ワサビ平で一泊翌朝早朝から行動スタートです。
ワサビ平は新穂高温泉から1時間ちょっとで到着。ここに小屋があることはとても都合よく左股登山道での起点となります。

今回は東西南北からのアクセスのご紹介です。
主なルート紹介

傘新道から
笠新道は言わずと知れた「北アルプス三大急登」私が初めてチャレンジして撤退した思い出のルート。標高差1500mを一気に登ります。北アルプス屈指の急登として知られる笠新道(かさしんどう)から抜戸岳・笠ヶ岳を目指すルートについて、5月中旬の状況を解説します。
先ほどの「鏡平経由」と比較すると、この時期の笠新道はさらにストイックで技術的・体力的な要求レベルが格段に上がるルートです。
ルートの核心:杓子平(しゃくしだいら)への急登
笠新道は、登山口(標高約1,360m)から杓子平(約2,450m)まで、一気に1,100mほどを突き上げる過酷な登りです。
- 積雪の状態:5月中旬であれば、下部の樹林帯は夏道が出始めている可能性がありますが、標高2,000m付近からは完全に雪の斜面になります。夏道のようなジグザグの歩行ではなく、アイゼンを効かせたキックステップや直登が続くことになります。
- 杓子平の開放感とリスク:急登を終えて杓子平に出た瞬間の笠ヶ岳の眺望は素晴らしいものですが、ここは大きなすり鉢状の地形です。気温が上がる日中は、周囲の斜面からの全層雪崩や落石に細心の注意を払う必要があります。
抜戸の登り(ぬけどののぼり)
杓子平から稜線(抜戸岳方面)へ出る最後の登りも難所です。
- 急峻な雪壁:夏場はガレ場の急坂ですが、この時期は「雪の壁」に近くなります。滑落すれば下まで止まらない斜度があるため、ピッケルワークとアイゼンワークに一瞬の油断も許されません。
- 踏み抜き:岩が露出している境界付近は、スノーブリッジが薄くなっていることが多く、腰まで埋まるような激しい踏み抜きが体力を奪います。
この時期の装備と体力
- 必須装備:10〜12本爪アイゼン、ピッケル。また、日差しが非常に強いため、雪目防止のサングラスや日焼け止めも欠かせません。
- 体力消耗:夏場でも「登り5時間、下り4時間」と言われる急登ですが、雪の状態によってはそれ以上の時間がかかります。ソロでの行動の場合、トレース(踏み跡)がないことも想定し、ラッセルに近い状況になっても余裕を持って行動できる体力プランが必要です。
鏡平ルートとの比較
| 項目 | 鏡平経由 | 笠新道 |
| 難易度 | 中程度(距離は長いが斜度は分散される) | 高い(一貫して急峻) |
| 危険箇所 | 弓折付近のトラバース | 杓子平・稜線直下の雪壁 |
| 景観 | 鏡池越しの槍・穂高が美しい | 杓子平からの笠ヶ岳が圧巻 |
| 所要時間 | 長め(わさび平経由で緩やかに登る) | 短縮できるが疲労度は倍増 |
アドバイス
5月中旬の笠新道は、登山道の整備が進む前の「純粋な雪山」に近い状態です。公共交通機関を利用して新穂高に入る場合、最終バスの時間などを考慮すると、かなりのハイペース、あるいは稜線でのテント泊(この時期は笠ヶ岳山荘も営業前)が前提のスケジュールになります。
もし「体力的に追い込みたい、静かな雪の斜面と向き合いたい」という目的であれば笠新道は魅力的ですが、安全マージンを広く取るのであれば、鏡平側から登り、状況を見て判断する方が柔軟な対応が可能です。
当日の気温上昇(融雪の進行)にはくれぐれもご注意ください。
槍見温泉から錫杖岳経由
錫杖の麓を通り笠へ伸びるルート。やや谷沿い沢沿いを通るため荒天時は避けた方がいい。大雨の時などは登山道も荒れ気味である。
槍見温泉(槍見館付近の登山口)から錫杖岳を経由するルートについて、現在の時期を踏まえた特徴と注意点をまとめます。
ルートの概要
槍見温泉から錫杖沢(しゃくじょうざわ)を詰め、錫杖岳(2,168m)を目指すルートは、一般登山道というよりはバリエーションルートやクライミングの接近路としての性格が強い道です。
- 槍見温泉〜錫杖沢出合: クリヤ谷方面への登山道を進み、錫杖沢の出合で本流を離れて沢沿いの急登に入ります。
- 錫杖沢の登り: 大きな岩が重なる急峻な沢筋を登ります。目印のテープはありますが、足場が不安定な場所が多いです。
- 錫杖岳(前衛壁・本峰): 「錫杖のコル」付近からは、クライミングで有名な前衛壁がそびえ立ちます。本峰へはさらに藪漕ぎや急坂をこなす必要があります。
現在(5月中旬)の状況と注意点
- 残雪状況: 例年、錫杖沢の上部や日陰にはまだ厚い雪渓が残っている時期です。特に沢筋を登るため、踏み抜きやスノーブリッジの崩落に十分な注意が必要です。アイゼンやピッケルなどの雪山装備が必須となる場面が多いでしょう。
- 増水: 雪解け水により、沢の流量が増えている可能性があります。渡渉や沢沿いの通行に注意してください。
- ルート判断: 夏道が完全に露出していない箇所では、ルートファインディング能力が求められます。
周辺の選択肢
もしこのルートから笠ヶ岳を目指す計画であれば、錫杖岳を経由して稜線に出るルートは非常に険しく、積雪期・残雪期は特に難易度が上がります。一般的な登山ルートとしては、新穂高温泉からの「鏡平経由」や「笠新道」が主流ですが、笠新道もこの時期は急な雪の斜面が続く厳しいルートとなります。
北アルプスのなかでも錫杖岳周辺は岩場が多く、非常にアルパインな雰囲気を持った魅力的な山域です。現在の雪の状態を確認しつつ、無理のない計画を立てるのが望ましいでしょう。
鏡平から抜戸岳方面
登山初心者の方にはお勧めコース。鏡平小屋を経由で抜戸岳の稜線に至る。力量に応じてワサビ平・鏡平・双六小屋で宿泊できる。
鏡平から抜戸岳(ぬけどだけ)へと続く稜線ルートについて、5月中旬という現在の時期に特化した状況と注意点を整理します。
この時期、このエリアはまだ完全な「残雪期」の装いです。
ルートの概要
- 鏡平(2,300m)〜弓折乗越(ゆみおりのっこし): 鏡平山荘から弓折岳の稜線へ出る急登です。夏道はジグザグに切られていますが、現在は雪に覆われており、直登に近い形での雪面登行となる箇所が多いです。
- 弓折乗越〜抜戸岳(2,813m): 「弓折中道」と呼ばれる稜線歩きに入ります。槍ヶ岳・穂高連峰の絶景を右手に眺めながらのルートですが、標高2,500m〜2,800mの稜線は風が強く、雪の状況によって難易度が大きく変わります。
現在(5月中旬)の状況と注意点
圧倒的な残雪量: 鏡平周辺は北アルプスの中でも雪が残りやすい場所です。木道や標識は雪の下に埋まっており、鏡池も結氷しているか、融け始めの不安定な状態です。
斜面のトラバースと直登: 弓折乗越への斜面や、抜戸岳への登りにあるトラバース箇所では、朝晩の冷え込みによる雪面の凍結(アイスバーン)に注意が必要です。10〜12本爪のアイゼンとピッケルが必須のコンディションです。
踏み抜きと隠れた岩: 日中、気温が上がると雪が腐り、激しい「踏み抜き」が発生します。ハイマツ帯の境界や岩の周囲は空洞になりやすいため、足元への神経を使います。
抜戸岳周辺の地形: 抜戸岳付近は岩が露出している箇所もありますが、基本的には雪の稜線です。ガスが出ると雪原で方向を見失いやすいため、GPSやコンパスによる確実なルート維持が求められます。
山小屋・アクセス
鏡平山荘: この時期はまだ営業前(例年7月上旬頃〜)です。避難小屋としての利用可否や冬季開放状況は事前に最新の情報を確認してください。水場も雪の下ですので、全ての行程において自給自足が前提となります。
わさび平小屋: 登山口からのアプローチにあるわさび平小屋も、本格的な営業は先になります。
まとめ
5月中旬の抜戸岳方面は、夏山とは全く別の「静寂と厳しさ」が同居する世界です。新穂高温泉から鏡平を経由するルートは、笠新道に比べれば傾斜は緩やかですが、距離が長く、雪の状態によっては想定以上に時間がかかります。
特に鏡平から上の斜面は、雪崩の危険性(気温上昇による全層雪崩など)もゼロではないため、当日の天候と雪質を見極めた慎重な判断が必要です。槍・穂高のパノラマは素晴らしい時期ですが、本格的な雪山装備と技術を持って挑むべきルートと言えます。

バリエーション
穴毛谷、笠谷、打込谷
バリエーションとしては沢沿いのルートがあります。ちょっと面白いのは笠旧道これは調査目的で立ちいったものですが、かつて使われていて事故があったためルート変更になったもので、国体の登山競技のために笠新道が設けられました。山頂から見る槍ヶ岳は播隆上人が心惹かれたのも頷けるほど美しい。

播隆平
ルート変更される前の笠への登山道。稜線からの下りは急ですが、カール状の平は歩いてて気持ちいい。現在は廃道となっていて通行は不可である。

いろんな角度の笠ヶ岳
山名の由来は傘を広げたような山容による。あと、岩と緑のバランスが良く、自分的には気持ちが落ち着く山容です。


笠谷
笠谷は笠ヶ岳北面より上り詰めるルートです。もちろん一般ルートではありません。一泊二日で山頂を目指し登りますが、結構大きな滝もあって見所があります。



穴毛谷
名前の由来は各自で調べてください(大人なネーミングだこと)日本近代登山の父・ウォルターウェストンは笠ヶ岳登頂の際はこの谷から登ったとされています。
ただこのルートは雪崩や落石、熊の棲家となかなか大自然を満喫できます。


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