
西日本シティ銀行の件で注目された「BeReal(ビーリアル)」と中国の関係については、主に「資本関係」と「データセキュリティ」の観点から解説できます。
結論から言えば、BeReal自体はフランス発のアプリですが、運営会社の背後には中国資本が入っています。
運営会社の資本構成(中国大手テンセントの関与)
BeRealはもともとフランスのスタートアップ企業によって開発されましたが、2024年6月に同じくフランスのアプリ・ゲーム大手であるVoodoo(ブードゥー)社によって約5億ユーロ(約844億円)で買収されました。
ここで中国との接点が生まれます。
テンセント(騰訊)の出資: 中国のテック巨人であるテンセントは、2020年からVoodoo社に対して約20〜25%の少数株主として出資しており、取締役会の席も保有しています。
戦略的提携: Voodoo社はテンセントの資本を受け入れることで、アジア市場(特に中国)への足がかりを得る戦略をとっています。
データセキュリティと地政学リスク
2026年現在、SNSアプリを通じた情報流出や、そのデータがどこに保管・管理されているかは、経済安全保障上の大きな懸念事項となっています。
中国資本への懸念: TikTok(バイトダンス)ほど直接的ではありませんが、「親会社に中国資本が入っている」という事実は、欧米や日本の当局から「間接的なデータアクセスのリスク」として注視される対象になります。
規律の「緩さ」が招くリスク: 今回の銀行員の不祥事のように、アプリの特性上、意図せず背景に機密情報(顧客データや防衛関連施設など)が映り込み、それが中国資本の関与するプラットフォーム上にアップロードされること自体が、セキュリティリスクとみなされる局面が増えています。
中国国内での利用状況
中国本土では、GoogleやMeta(Instagram)、X(旧Twitter)と同様に、BeRealも政府のネット検閲(グレート・ファイアウォール)の対象となっており、基本的にはVPNなしでは利用できません。
中国版BeRealの存在: 中国国内では、バイトダンスなどの現地企業がBeRealの「加工しない」「通知が来たら即投稿」という仕組みを模倣した機能を自社アプリ(TikTokの中国版『抖音』など)に実装しており、独自の進化を遂げています。
30年間のデータ保存の承諾を求めるBeReal
BeRealの利用規約には、ユーザーが投稿したコンテンツを「30年間にわたって無償で利用できる権利」を運営側に与えるという条項が含まれており、これがプライバシー保護や機密保持の観点から大きな問題です。
「30年間の利用権」の正体
BeRealに写真を投稿した時点で、ユーザーは運営会社(現在は仏Voodoo社)に対し、以下の非常に広範なライセンスを承諾したことになります。
- 期間: 投稿から30年間。
- 範囲: 全世界での複製、加工、編集、公開、配信、および他社へのサブライセンス(再許諾)。
- 用途: 広告、プロモーション、マーケティング資料などへの利用。
- 対価: ロイヤリティ(使用料)は一切支払われない「無償」の契約。
変化の激しいこの時代に「30年間」はあまりに永く、会社自体が「寿命」を迎える可能性も高い。もし「経営権」が移行した場合、蓄積された「データ」も世界を彷徨う事になります。
「企業の短命化」
日本では、東京商工リサーチなどの調査によると、2025年に倒産した企業の平均寿命は23.5年となっています。
世界的に見ると、企業の寿命は短文化する傾向にあります。
- S&P 500(米国)の傾向: 1950年代には60年以上あった平均滞在期間が、現在は15年〜20年程度まで短縮しています。2030年代にはさらに短くなると予測されています。
- 要因: デジタル・トランスフォーメーション(DX)による既存ビジネスモデルの崩壊(破壊的イノベーション)や、M&A(合併・買収)の活発化が主な原因です。
「友達限定」設定との矛盾
多くのユーザーはアプリ内の公開範囲を「友達限定」にしていますが、これはあくまで「他のユーザーにどう見えるか」という表示制限に過ぎません。
運営側の権利: 利用規約上、友達限定で投稿した写真であっても、運営側はそれを広告素材などに利用する権利を保持しています。
公開の拡散: 規約上、全世界での利用が認められているため、本人の意図しないところで広告動画として流れるリスクが物理的に存在します。
キャリアとセキュリティへの影響
30年という期間は、平均的なビジネスパーソンの現役期間の約6割に相当します。
データ・ゾンビ化
若気の至りでの「うっかり投稿」が、30年後に昇進や転職、あるいは政治的な活動の際に掘り起こされる、あるいは企業の広告に使われ続ける「デジタルタトゥー」としてのリスクがあります。
情報漏洩の長期化
西日本シティ銀行の事例のように、顧客情報が映り込んだ場合、その「証拠」としての画像利用権が運営側に30年間握られ続けることになり、企業にとっては構造的なセキュリティ上の脅威となります。
データの削除について
規約では、アカウント削除を申請すれば「30日以内に個人情報を削除し、90日以内にバックアップも消去する」としています。しかし、一度他者にシェアされたコンテンツや、すでに広告等に利用されている場合の権利関係がどのように解消されるかは不透明な部分が多く、技術的に「完全な抹消」を保証するものではありません。
BeRealの「2分以内に撮らなければならない」という切迫感と、この「30年間という長期の権利拘束」が組み合わさることで、本人が規約を熟読してリスクを評価する間もなく、取り返しのつかない承諾を与えてしまう構造が問題視されています。
まとめ
BeRealは「フランス発のクリーンなアプリ」というイメージが強いですが、実態としては「中国テック大手テンセントが一定の影響力を持つフランス企業の傘下」にあります。
銀行や建設業界など、守秘義務が極めて高い職域において「私用スマホでのBeReal利用」が問題視されるのは、単なるマナーの問題だけでなく、こうした「資本の背景」を通じた潜在的な情報流出リスクも背景にあると考えられます。


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