
マスコミはなぜ上から目線なのか
某タレントの「嫌なら観るな」という言葉は、かつてテレビが「娯楽の王様」だった時代の傲慢さや、作り手側の思考停止を象徴するフレーズとして、今でも多くの議論を呼びます。
視聴者からすれば、「公共の電波を使っているという自覚はあるのか」「もっと面白いものを作ろうとする努力を放棄していないか」と感じるのは、非常に真っ当な感覚だと思います。
1. 「公共放送・公益性」との矛盾
テレビはYouTubeなどの個人メディアとは異なり、公共の電波を割り当てられています。
- 視聴者の権利: 誰もがアクセスできる公共財である以上、視聴者には批評する権利があります。
- 作り手の責任: 「嫌なら観るな」と突き放すのは、公共のインフラを担うプロとしての責任(説明責任や品質向上)を放棄しているように映ります。
2. 「選択肢の多様化」がもたらした皮肉
かつては「嫌でも他に観るものがないから、渋々観る」という消極的な視聴者が存在しました。しかし、現在は違います。
- 今の現実: YouTube、Netflix、SNSなど、娯楽は無限にあります。
- 結果: 言葉通りに視聴者が「観なくなった」結果、現在の視聴率低迷や広告費減少に直結しています。かつての強気な言葉が、今や自分たちの首を絞めるブーメランになっている側面は否めません。
3. 批判の背景
視聴者が番組をつまらなく感じる要因は、以下のような点ではないでしょうか。
- 企画のテンプレート化: ネットでバズった動画の紹介、ひな壇での内輪ノリ、安易なクイズ番組。
- コンプライアンスを盾にした逃げ: 「今は規制が厳しいから面白いことができない」という言い訳への違和感。
- 双方向性の欠如: 視聴者の声を「ノイズ」として処理し、内輪の理論だけで制作し続ける姿勢。
テレビには、プロの技術(編集、ライティング、取材力)という大きな武器があるはずです。それにもかかわらず、「嫌なら観るな」という言葉に逃げてしまうのは、確かにクリエイティビティの敗北と言えるのかもしれません。
今後の展望
2026年現在、日本のテレビ放送業界は、人口減少やネット配信の普及に伴う広告収入の減衰を受け、歴史的な転換期を迎えています。
総務省が進める「放送システムの在り方検討会」などの議論に基づき、「テレビ局の統廃合」「電波の有効利用(再分配)」「データ通信枠の活用」の3軸で大きな変化が起きています。
1. テレビ局の統廃合と経営統合の加速
地方局を中心に、従来の「1県1波」という原則が見直され、放送の維持を目的とした経営の効率化が進んでいます。
- マスメディア集中排除原則の緩和: 以前は1つの資本が複数の放送局を支配することを厳しく制限してきましたが、経営基盤を強化するため、複数の地方局が同じ持株会社(ホールディングス)の傘下に入るなどの「経営統合」が容易になりました。
- マスター(送出設備)の共同利用: 番組を送り出す心臓部である「マスター設備」を隣接する県の放送局同士で共通化する動きが活発化しています。これにより、各局はコンテンツ制作に予算を集中させることが可能になります。
- NHKの波削減: NHKもスリム化を進めており、2026年3月末には「ラジオ第2放送」の廃止・再編が計画されるなど、電波の効率化において先行しています。
2. 電波の再分配(オークション議論と有効活用)
5G/6Gといったモバイル通信の需要拡大に伴い、テレビ放送に割り当てられているUHF帯(470MHz〜710MHz)の一部を通信に振り分ける、あるいは「共用」する議論が続いています。
- 電波利用料の見直し: 放送局が支払う電波利用料の構造を変化させ、より経済的価値に見合った負担を求めることで、電波の「再配分」を促す仕組みが強化されています。
- 放送・通信の融合: 「放送は動画を送るもの」という固定観念を捨て、同じ周波数帯の中で通信サービスをハイブリッドに提供する技術的な試みが進んでいます。
3. データ通信枠(IPDCなど)の戦略的活用
地上デジタル放送の「隙間」を活用したデータ放送(dボタン)は以前からありましたが、現在はそれを高度化したIPDC(IP Data Cast)などの技術が注目されています。
主な活用シーン
- 災害対策(Lアラートの高度化): 通信回線が混雑・断絶する災害時でも、放送波を使ってスマートフォンや公共サイネージに大容量の避難情報を一斉送信します。
- IoT・コネクテッドカーへの配信: 走行中の自動車(自動運転車など)に対して、道路交通情報やソフトウェアのアップデート(OTA)を放送波経由で行うことで、通信コストを抑えつつ広域にデータを届けます。
- 放送波の「データパイプ」化: 映像を送るだけでなく、空いている帯域を「データの高速道路」として外部企業に貸し出すビジネスモデルも模索されています。
まとめ:2026年の展望
今後のテレビ局は、単なる「番組制作・放送事業」から、「地域情報を守るデータプラットフォーム」へと変貌を遂げるべき。統廃合によって経営体力を維持しつつ、余った電波資源をデータ通信分野へ活用することで、新たな収益源を確保する動きが主流となれば生き残りの活路となるでしょう。
ポイント: 今後のキーワードは「放送の公共性」と「電波の経済価値」のバランスをどう取るかという点に集約されます。


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