副首都構想に名古屋が飛ばされる訳

地形的なデメリットと交通網の脆弱性

名古屋が日本の「副首都（またはバックアップ拠点）」として適していない、あるいは選ばれにくいとされるには、地理的・防災的観点から非常に明確かつ深刻な理由がいくつか存在します。

名古屋は日本の産業の中心地であり、地理的にも中心に位置していますが、「東京のバックアップ」として考えた場合、そのメリットがそのまま最大のリスク要因になってしまうというジレンマを抱えています。

主な理由は以下の通りです。

これが最大の理由です。首都機能移転や副首都構想の根本的な動機は「東京が壊滅した際に機能する場所」を確保することですが、名古屋はその前提を崩す可能性があります。

被害想定の激しさ: 名古屋および愛知県は、南海トラフ巨大地震の「震度7」および「大津波」の想定エリアに直撃しています。
海抜ゼロメートル地帯: 名古屋市の西部から南部にかけては広大な「海抜ゼロメートル地帯」が広がっており、津波や液状化によるインフラ壊滅のリスクが極めて高いとされています。
共倒れの可能性: もし東海・東南海・南海地震が連動して発生した場合、東京と名古屋が同時に被災する可能性が高く、バックアップとしての機能を果たせない恐れがあります。

バックアップ拠点は、本拠点（東京）とは異なる気象・地質条件下にあることが望ましいですが、名古屋は東京に近すぎます。

富士山の火山灰: もし富士山が大規模噴火を起こした場合、風向きによっては東京だけでなく、名古屋方面への交通網（東名・新東名高速、新幹線）も同時に寸断されるリスクがあります。
300km圏内: リニア中央新幹線が開通すれば東京-名古屋間は40分程度で結ばれますが、災害対策の観点からは「同一災害圏内」とみなされることがあり、リスク分散としては距離が不十分という指摘があります。

日本の交通インフラは東海道（東京～名古屋～大阪）に極端に集中しています。

インフラの「一本足打法」: 東京と名古屋を結ぶ大動脈（東海道新幹線、東名高速）が、災害やテロで寸断された場合、名古屋自体が孤立する、あるいは東京への救援ルートとして機能しなくなるリスクがあります。
代替性の低さ: 例えば、大阪や福岡であれば、日本海側ルートや空路（西日本・アジア方面からのアクセス）を活用しやすいですが、名古屋は東京と同じ太平洋ベルト地帯のインフラに依存しすぎています。
空路の少なさ：空港の数を比較しても、愛知県を含め近隣自治体に数が少ないのが実情です。中部国際空港は非常時には閉鎖されると思われますが、その場合のバックアップは県営名古屋空港になります。しかしアクセスが悪く鉄道も通ってない「陸の孤島」です。しかも官民共用空港ですので、使用制限される可能性が高い。

政治的・経済的な観点からの理由です。

経済圏の独立性: 大阪（関西圏）は、東京とは別の独自の経済圏・文化圏を持っていますが、名古屋（中京圏）は経済的に東京との結びつきが強すぎる（ストロー現象）ため、独立したバックアップ拠点として機能しにくい側面があります。
政治的な動き: 大阪府・市は長年「副首都化」を政策として掲げ、省庁移転などを具体的に要望してきましたが、名古屋にはそこまでの政治的な熱量や準備態勢が整っていないという現状があります。