
道路交通法における「歩行者の右側通行」
法律上の原則と、なぜそうなっているのか、そして意外と知られていない「例外」について整理して解説します。
1. 法律上のルール(道路交通法 第10条)
道路交通法では、歩行者の通行場所について明確に定められています。
- 原則: 歩行者は、歩道と車道の区別がない道路では、道路の右側端を通行しなければならない。
- 歩道がある場合: 歩道や十分な幅のある路側帯がある場所では、そこを通らなければなりませんが、その中(歩道内)で右側を通るか左側を通るかは、実は法律では決められていません。
2. なぜ「右側」なのか?(対面交通の原則)
1949年(昭和24年)に、それまでの「人も車も左」から「人は右、車は左」に変更されました。その最大の理由は安全確保です。
- 対面交通: 車と同じ方向(背を向けて)を歩いていると、後ろから来る車に気づくのが遅れます。
- 回避行動: 右側を歩いていれば、前方から来る車を視認できるため、危険を感じたときにすぐ避けることができます。
3. 「右側」を通らなくてもいい例外
法律(第10条)には、右側を通らなくてよいケースも書かれています。
- 右側が危険な場合: 右側を通ることが著しく危険なときは、左側を通ることができます(例:右側が崖崩れしている、工事中など)。
- 道路を横断する場合: 横断歩道などへ向かうための移動。
- 歩道がある道路: 前述の通り、歩道の中では左右どちらを歩いても罰則などはありません。
4. なぜ「左側」を歩く人が多いのか?
ここからが本題(名古屋の事例)に繋がりますが、多くの人が無意識に左側を歩いてしまうのには理由があります。
- エスカレーターの習慣: 多くの地域で左側に立ち止まる習慣があるため、その流れで歩行も左寄りになる。
- 自転車のルール: 自転車は「軽車両」なので法律で左側通行が義務付けられています。歩道上で自転車と歩行者が混在するとき、自転車に引きずられて歩行者も左に寄る傾向があります。
- 歴史の名残: 戦前までの「人も左」という習慣が、教育や家庭の中で世代を超えてなんとなく残っている。
地域による慣習の違い
名古屋では「人は左側、車も左側」という感覚を持つことが多い。実はこれ、名古屋に限らず日本の多くの地域で見られる現象ですが、特に名古屋(および東日本)と大阪(西日本)を比較するとその違いが際立ちます。
なぜ名古屋の人が道路や歩道で左側を通る傾向があるのか、その理由はいくつかの歴史的・文化的な背景が絡み合っています。
1. 「武士の習わし」説(歴史的背景)

日本人が左側を通るルーツは、江戸時代まで遡ると言われています。
- 刀の鞘(さや)が当たるのを防ぐ: 武士は左腰に刀を差していました。右側を通ると、すれ違う時に刀の鞘同士が当たってしまい、「鞘当て」というトラブル(最悪の場合、決闘)に発展する恐れがありました。
- 身を守るため: 左側を通ることで、利き手である右手で即座に刀を抜ける状態を保っていたという説もあります。
城下町として栄えた名古屋では、こうした武士のルールが生活文化の根底に残ったという考え方があります。
2. 交通ルールの変遷と影響
現在の法律では「人は右、車は左」ですが、昔は違いました。
- 1924年(大正13年): 当時は「人も車も左側」というルールが全国的に徹底されていました。
- 1949年(昭和24年): 交通事故防止のため、対面交通(車と向き合う形)として「人は右」に変更されました。
しかし、歩道の中や駅の構内など、車と直接対面しない場所では、昔からの「左側通行」の習慣がそのまま残り、今に至っていると考えられています。
3. 東西の文化の境界線
面白いことに、日本には「エスカレーターの立ち位置」に代表される左右の文化圏があります。
- 東京・名古屋(東日本型): 左側に立ち、右側をあける(左側通行が基本)。
- 大阪(西日本型): 右側に立ち、左側をあける(右側通行が基本)。
名古屋は地理的に中間ですが、文化的には東京に近い「左側通行圏」に属しています。大阪がなぜ右側なのかについては、1970年の大阪万博で欧米基準(右側通行)に合わせたから、という説が有力です。
4. 名古屋特有の「広すぎる道路」
名古屋といえば「100メートル道路」に象徴される、非常に幅の広い歩道が特徴です。 歩道が広すぎると、人は無意識に「ルール」よりも「流れ」に従います。名古屋では鉄道駅(名古屋駅や栄駅)の構造やエスカレーターの習慣が「左」であるため、それがそのまま広い歩道での歩行ルートにも反映されている可能性があります。ただし、狭い生活道路で「右と左」通行がバッティングすると、車との接触のリスクが上がり非常に危険です
まとめ
名古屋の人が左側を通るのは、「日本の伝統的な武士文化」と「東日本的な習慣」が、現代の都市生活(駅や歩道)の中で今も生き続けているから、と言えそうです。
- 車道(歩道がない道)では「右側通行」が法律上の義務。
- 歩道の中では、左右どちらを歩いても法律違反ではない。
名古屋の「100メートル道路」のように立派な歩道がある場所では、法律上の縛りがないため、結果として「昔からの
逆に、大阪へ行くと急に「右側通行」の流れに変わるので、そのギャップを体験してみるのも面白い。


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