
徳島大学大学院で今月20日、特別研究学生の男性(27)が死亡した事案で、大学は28日、男性の発見現場の室内に31キロのドライアイスが置かれていたと発表しました。そもそもドライアイスを密閉空間で大量に使用した場合、どんな危険が潜んでいるのでしょう。
実は危険だった!? ドライアイスで起こる意外な事故とは
1. ドライアイスとは?意外と知られていない基礎知識
ドライアイスの仕組みと特性
ドライアイスは、二酸化炭素を圧縮・冷却して固体化させたものです。その特徴的な性質として、-78.5℃という非常に低い温度で昇華し、液体にならずに一気に気体へ変化します。この昇華の過程で大量の冷気を放出するため、冷却剤として広く利用されています。1kgのドライアイスが昇華すると約500Lもの二酸化炭素ガスが発生します。
また、二酸化炭素ガスは無色無臭であるうえ、空気の約1.5倍の重さを持つため、低い位置に滞留しやすい性質もあります。この点が、ドライアイスを利用する際に注意すべきポイントのひとつとなっています。
安全に見えて危険な性質
一見便利で安全そうに思えるドライアイスですが、実はその特性に起因する危険性があります。例えば、二酸化炭素ガスの濃度が3〜4%を超えると、頭痛やめまいといった症状が現れることがあります。そして、濃度が10%を超えると命の危険が生じるほど中毒性が高まります。短時間で死亡に至ることもあり、これがドライアイス関連の代表的な死亡原因となっています。
特に、密閉空間でドライアイスを使用した場合、放出される二酸化炭素ガスが蓄積し、酸素の供給が不足する「酸素欠乏」の状態を引き起こします。このような状況では人間の体に深刻な影響を与える可能性が高いため、取り扱い時には十分な注意が必要です。
さらに、ドライアイスの極低温は皮膚を凍傷させる恐れもあります。素手で触ると、皮膚が低温やけどを負う危険があるため、直接接触を避け、防護具を利用することが推奨されています。
このように、ドライアイスは便利な冷却剤である一方で、適切な知識と取り扱い方法を知らないまま使用すると、思いもよらない事故や健康被害を引き起こす可能性があります。特に葬儀現場など、ドライアイスが頻繁に使用される環境では、換気や安全対策が非常に重要です。
2. ドライアイスで起こる主な事故とその原因
二酸化炭素中毒の危険性
ドライアイスは二酸化炭素を固化したもので、-78.5℃という低温で昇華する特性を持っています。これにより、気化した二酸化炭素が周囲の空間に放出されます。この二酸化炭素が人体に及ぼす影響は深刻で、濃度が3〜4%を超えると頭痛やめまいなどの症状を引き起こし、10%を超えると視覚障害や耳鳴りが発生、短時間で命に関わる状態に至ることがあります。
特に棺の近くや閉鎖された空間でドライアイスを使用する場合、適切な換気を怠ると二酸化炭素が空気中に蓄積し中毒を引き起こす可能性があります。近年では葬儀の際に故人の顔を見るために棺へ近寄った遺族が、二酸化炭素中毒で死亡する事故が複数件確認されています。ドライアイスの使用目的が遺体の保存である以上、遺族や関係者への注意喚起が必要です。
密閉空間での酸素欠乏事故

密閉空間でドライアイスを使用することで、空間内の酸素濃度が低下し、酸素欠乏事故を引き起こす危険性があります。ドライアイスは昇華すると500倍以上の体積を持つ気化二酸化炭素になります。この重い二酸化炭素は空気よりも比重が大きいため、低い場所にたまりやすい特性があります。特に体勢が低いまま長時間そこにいると、酸素を吸入する機会が減り、意識障害や窒息に繋がる可能性もあります。
実際、密閉空間や十分に換気がされていない部屋で、棺の近くにいる状態で二酸化炭素にさらされ、死亡に至った事例が報告されています。このような事故を防ぐためには、ドライアイスを使用する際、使用場所の換気を積極的に行うことが基本となります。また、ドライアイスを使う空間では一人で作業せず、複数人で状況を確認し合うことも重要です。
冷却剤としてのメリットと盲点
ドライアイスは非常に低い温度を持ち、冷却剤として多くの場面で有用です。食品の保冷や科学実験、葬祭施設での遺体の保存など、幅広く活用されています。しかし、このような利便性がもたらす一方で、見落とされがちなリスクが存在します。
例えば、気化した二酸化炭素による事故は、ドライアイス使用の盲点と言えます。このリスクは、特に葬儀現場や家庭内での利用時に顕著です。ドライアイスを「安全な冷却剤」と過信し、必要な注意を怠ることで重大な事故が引き起こされることがあります。また、子どもが触れて凍傷を負うといった物理的な危険性も無視できません。
冷却効果や持ち運びやすさというメリットを十分に享受するためには、そのリスクへの理解と適切な使用法が不可欠です。ドライアイス使用時には安全装置の設置や換気の徹底、さらに十分な注意喚起の実施が求められます。
3. 葬儀現場での事故事例と教訓
棺に使われるドライアイスの役割
葬儀の場でドライアイスが使用される主な目的は、遺体の腐敗を防ぐことです。遺体は自然に腐敗が進行しますが、ドライアイスの低温を利用することで細菌の繁殖を抑制し、衛生状態を保つことができます。特に、多くの時間をかけて故人を見送る葬儀では、ドライアイスの存在が欠かせません。
ドライアイスは二酸化炭素の固体で、約-78.5℃という低温で昇華し、気体になります。この性質により遺体を効率的に冷やすことができる反面、気化した二酸化炭素が引き起こす危険性についても理解しておく必要があります。
参列者が注意すべきポイント
参列者が葬儀場で注意すべきポイントとして、棺に使用されているドライアイスの取り扱いが挙げられます。気化した二酸化炭素は無色無臭で、空気の約1.5倍の重さがあります。そのため、低い場所に滞留しやすく、長時間棺の近くにいることや顔を近づける行為は非常に危険です。
過去の事例では、棺に顔を近づけた際に二酸化炭素を吸い込むことで中毒を引き起こし、死亡事故につながったケースが報告されています。参列者が故人に近づく際は十分な換気が行われているかを確認し、長時間滞在せず、必要以上に顔を棺に近づけないことが重要です。
過去の事故から学ぶ安全対策
過去の事例から学べる教訓として、ドライアイスを使用する際の安全対策の徹底が挙げられます。2018年から2021年の間に、少なくとも4件の二酸化炭素中毒による死亡事故が発生しており、多くが自宅や葬儀場で起こっています。これらの事故は、棺の近くで長時間滞在することや、棺内に顔を入れる行為が原因で発生しています。
このような事故を防ぐためには、参列者や遺族がドライアイスの危険性を正しく理解し、使用環境での換気を十分に行うことが大切です。また、棺内に顔を近づけないよう注意喚起を行い、危険な状況を未然に防ぐことが必要です。全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)も、このような悲劇を防ぐために注意を呼びかけており、複数人での見守りや迅速な対応が推奨されています。
4. 知られざる生活の中のリスク
家庭での使用時の注意点
ドライアイスは家庭でも食品の保存や冷却剤など、多くの場面で便利に使われています。しかし、正しく取り扱わないと重大な事故につながる可能性があります。特に密閉された空間での使用時には二酸化炭素中毒のリスクが存在します。例えば、車の中や小さな部屋で大量にドライアイスを使用することで、二酸化炭素が蓄積し、酸素欠乏状態になることがあります。実際に、密閉空間で二酸化炭素濃度が上昇した結果、死亡原因となったケースも報告されています。そのため、ドライアイスを家庭で使用する際は必ず十分な換気を行い、長時間近くで作業しないようにすることが重要です。また、直接触れると凍傷の危険があるため、手袋や器具を使って取り扱うことを徹底しましょう。
イベントでの思わぬ危険性
パーティーやイベントでの演出として、ドライアイスのもくもくとした煙を使うことがあります。その効果的な見た目から注目を集めますが、しっかりとした注意がなければ危険を伴います。ドライアイスから発生する煙は二酸化炭素が含まれており、通常よりも空気が薄くなるため、長時間その場に留まると酸欠につながる恐れがあります。特に低い位置に煙が溜まりやすいため、子どもやペットがいる場合は注意が必要です。また、大量のドライアイスを使用する場合、気化した二酸化炭素が周囲の空気を置き換えることで、中毒や失神を引き起こすことがあります。換気を適切に行い、参加者には不用意に煙に近づかないよう注意を促すことが大切です。
子どもの事故を防ぐには
家庭やイベントでドライアイスを使用する際、特に子どもの安全には細心の注意を払う必要があります。ドライアイスは煙を発生させる特性や独特な形状が興味を引きやすく、触ってしまったり遊んでしまったりするリスクが高いです。しかし、直接触れると凍傷を起こしたり、誤って飲み込んでしまった場合は非常に危険です。また、前述の通り、気化した二酸化炭素が低い場所に滞留しやすいため、小さな子どもが中毒症状を引き起こす可能性もあります。ドライアイスを使う際は、子どもの手の届く場所に置かないよう心がけ、使用中や処分時には大人がしっかり管理することが求められます。子どもにもドライアイスの危険性を理解させ、絶対に触れないよう伝えることが重要です。
5. ドライアイスを安全に使用するための指針
安全使用の基本ルール
ドライアイスは温度が非常に低く、直接触れると凍傷を引き起こす恐れがあります。そのため、使用時には必ず厚手の手袋を着用してください。また、ドライアイスは二酸化炭素の固体で、昇華して約500Lもの二酸化炭素ガスを発生させます。特に密閉空間での使用は危険であり、二酸化炭素濃度の上昇が死亡原因となる可能性があります。棺に使用する場合でも、室内の密閉を避け、十分に換気を行うことが必要です。
換気の重要性とその方法
ドライアイス使用時の換気は、二酸化炭素中毒を防ぐために非常に重要です。二酸化炭素は空気よりも重いため、低い場所に滞留しやすい特性があります。特に窓のない部屋や地下室などでは、換気が不十分だと一酸化炭素中毒と同様に命に関わる事故が起きます。室内でドライアイスを使用する際は、必ず窓を開け、扇風機や換気扇を利用して空気の流れを作りましょう。小窓だけを開けるのでは十分な換気にならない場合もあるため、可能な限り広い通気口を確保してください。
非常時の正しい対応方法
万が一ドライアイス使用中に気分が悪くなったり、人が倒れていたりする場合は、まず安全な場所へ避難することが最優先です。倒れている人を助ける際も、自身が二次被害に遭わないよう、室内の換気を行った上で対応しましょう。近づく際はできるだけ短時間で行動し、迅速に救急車を呼びます。また、蘇生処置が必要な場合は、人命救助のための心肺蘇生を行うことが推奨されます。これらの対応を覚えておけば、緊急時に冷静に行動できる可能性が高まります。


コメント