
香港で発生した高層ビル火災では、竹足場とネットが原因として挙げられています。香港では伝統的に竹足場は違法ではなく、足場を覆うネット飛散防止用ネットが違法品の可能性が取り上げられています。
一方、日本では足場工事に関してどのような法整備されているのか。足場の工事費が高いと思われている方もいると思いますが、法律での規制が厳格にされています。ここでは国内基準を紹介します。
現在では普段使われていませんが、日本にも丸太足場と言うものも存在します。私も登った経験がありますが、とても怖いものです(住宅用途として3現場で体験)。歴史的建造物などの修繕では使われる場合があるのと、住宅の建て込んだ場所で、近隣の建物と距離が取れない場合など使われたりします。
国内の足場の基準 法律
国内の足場に関する主な基準や法律は、労働安全衛生法とその下位法令である労働安全衛生規則によって定められています。
特に、作業員の墜落防止を目的とした基準が頻繁に改正・強化されています。
労働安全衛生法・労働安全衛生規則の主な基準
| 項目 | 主な基準・規制 | 施行時期(主な改正) |
| 本足場の使用 | 幅が1メートル以上の箇所で足場を使用する場合、原則として本足場の使用が義務化されました(労働安全衛生規則 第561条の2)。※つり足場や障害物等で困難な場合を除く。 | 令和6年4月1日 |
| 作業床の設置 | 高さ2メートル以上の作業場所には、原則として作業床を設けなければなりません(労働安全衛生規則 第563条)。 | 従前から規定 |
| 作業床の幅・隙間 | * 幅は40センチメートル以上とすること。 | 従前から規定 |
| * 床材間の隙間は3センチメートル以下とすること。 | 従前から規定 | |
| * 床材と建地との隙間は12センチメートル未満とすること。 | 従前から規定 | |
| 墜落防止措置 | 足場の種類に応じた手すり、中さん(手すりと作業床の間にある横材)、幅木などの設置が義務付けられています(労働安全衛生規則 第563条)。 * 手すりの高さは原則85cm以上など。 | 令和5年10月1日 等 |
| 最大積載荷重 | 足場の構造・材料に応じて最大積載荷重を定め、超過して積載してはなりません。また、これを労働者に周知させる必要があります(労働安全衛生規則 第562条)。 | 従前から規定 |
| 点検・記録 | * 事業者は、足場の組立て、一部解体、変更等の後、および作業開始前、悪天候の後などに点検を実施しなければなりません。 | 従前から規定 |
| * 点検者の指名と、足場の組立て等後の点検結果の記録・保存が義務化されました。 | 令和5年10月1日、令和6年4月1日 | |
| 足場の組立て等 | * 高さ5メートル以上の構造の足場の組立て、解体、変更の作業には、足場の組立て等作業主任者を選任しなければなりません。 | 従前から規定 |
| * 足場材の緊結等の作業を行う際は、幅40cm以上の作業床の設置や、要求性能墜落制止用器具(フルハーネス型安全帯など)の取り付け設備・使用させる措置を講じる必要があります。 | 令和元年 等 |
現在の主流足場の種類
枠組足場

くさび緊結式足場

単管足場

建築基準法との関連
足場の設置自体は、主に労働安全衛生法で規定されますが、建築基準法も、工事に伴う作業員の安全確保や、資材の飛散・落下防止など、周囲への安全確保という観点から足場設置の必要性や安全対策に関する規定を定めています。
重要なポイント
- 特に2024年(令和6年)4月1日より、幅1メートル以上の場所での本足場の原則義務化など、規制がさらに強化されています。
- 高さ2メートル以上の場所での作業には、適切な足場や墜落防止措置が必須です。
足場の設置や作業を行う際には、これらの法令・規則を遵守することが極めて重要です。
最新かつ詳細な情報については、厚生労働省や労働基準監督署の資料をご確認ください。
足場本体の主な素材と規格
足場の構造材や作業床(踏み板)には、主に以下の素材が用いられ、それぞれ**JIS(日本産業規格)**などの規格に基づいて、安全性と強度を確保しています。
1. 鋼材系(スチール製)
足場の骨組みとなる主要な素材です。
- 素材: 一般構造用炭素鋼鋼管(JIS G 3444、STK-500、STK-400など)
- 用途:
- 単管パイプ(外径48.6mm、厚さ2.5mmが一般的)
- 建枠(枠組足場の主要部材)
- 筋交い(ブレス)
- クランプ(単管同士を緊結する金具)
- 特徴: 強度が高く、耐久性があるため、現在最も広く使用されています。ほとんどの場合、防錆効果のあるメッキ加工が施されています。
- 作業床(布板): 鋼製布板も主流で、軽量化と滑り止めのために穴あきや波形加工がされています。
2. アルミ製
軽量化が求められる場所や移動式足場(ローリングタワー)などに使用されます。
- 用途: 作業床(アルミ製布板)、一部の足場フレーム。
- 特徴: スチールに比べて軽量で、組み立て・解体が容易です。錆びにくく、高所作業や搬入が困難な現場に適しています。
3. 木製
かつては丸太足場として使用されていましたが、現在は鋼材が主流です。
- 用途: 主に足場板(杉足場板、合板足場板)として、単管足場などで使われます。
- 特徴: 安価で軽量ですが、材質の不安定さから、近年は鋼製布板やアルミ製布板の使用が増えています。
ネット・養生シートの素材と法令
足場に設置されるネットやシートは、主に落下物による労働者や第三者への危害防止、塗料などの飛散防止、防音を目的に設置されます。これらは難燃性や防炎性能が求められます。
1. ネット・シートの素材
- 主な素材: 合成繊維(ナイロン、ポリエステルなど)
- 加工: 火災時の延焼拡大を防ぐための防炎加工が必須です。
2. 主な法令と規格
| 項目 | 基準・規制 | 関連法令・規格 |
| 設置義務 | 作業床からの物体落下防止措置として、高さ10cm以上の幅木、メッシュシート、防網のいずれかの設置が義務付けられています。 | 労働安全衛生規則 第563条 |
| 防炎性能 | 防炎規制の対象となる工事(高さ31m以上の高層建築物、地下街など)では、防炎性能を有するシートの使用が義務付けられています。 | 消防法令 |
| 性能規格 | シートの強度、網目の寸法、はとめ金具の強さなどが細かく定められています。 | JIS A 8952(建築工事用シート) |
| 分類 | JIS A 8952では、シートの強度により以下の分類があります。 | JIS A 8952 |
| * 1類(高強度): シート単独で落下物による危害防止が可能な強度。 | ||
| * 2類(標準強度): 金網などと併用すれば危害防止が可能な強度。 | ||
| 墜落防止ネット | 水平に張る墜落防止用のネット(安全ネット)は、合成繊維製で、網目の辺の長さが10cm以下であることなどが定められています。メッシュシートはこれに使用できません。 | 墜落防止のための安全ネットの構造に関する技術上の指針 |
足場本体の素材と規格は強度と耐久性に直結し、ネットの素材と規格は安全性の確保に直結する非常に重要な部分です。
丸太足場 法律上の問題は無いのか

丸太足場は、現代では鋼管足場が主流となり使用される機会は大幅に減りましたが、法律(労働安全衛生法)上、使用が全面的に禁止されているわけではありません。
しかし、丸太足場を使用する際は、労働安全衛生規則 第569条(丸太足場)に定められた厳格な技術基準に適合させる必要があります。この基準は、鋼管足場とは異なる独自の構造・緊結方法に関するものです。
法律上の主な問題点(遵守すべき基準)
丸太足場を使用する際に、特に重要で、違反した場合に法律上の問題となる可能性がある主な基準は以下の通りです。
1. 構造と部材に関する基準(安衛則 第569条)
| 項目 | 遵守すべき基準の例 | 目的 |
| 建地(支柱)間隔 | 2.5メートル以下とすること。 | 倒壊防止、足場全体の強度確保。 |
| 第1の布(水平材) | 地上から3メートル以下の位置に設けること。 | 脚部の補強、足場の初期安定性確保。 |
| 脚部の措置 | 沈下や滑動を防止するため、根元を埋め込む、根がらみを設ける、皿板を使用する等の措置を講じること。 | 足場沈下による不安定化・倒壊の防止。 |
| 継手 | 建地を継ぎ足す場合、重ね継手(1メートル以上重ねて2箇所以上縛る)または突合せ継手(2本組とするか添木を用いて4箇所以上縛る)により堅固に接続すること。 | 垂直方向の強度と接続部の脱落防止。 |
| 緊結(縛り方) | 部材の接続は、丈夫な**鉄線(番線)**などを用いて、緩みがないよう確実に緊結すること。 | 部材の脱落や足場の変形・倒壊防止。 |
| 壁つなぎ・控え | 一側足場、本足場、張出し足場の場合、定められた位置と間隔で壁つなぎや控えを設けること。 | 横方向への倒壊防止。 |
2. 作業主任者の選任
- 高さ5メートル以上の丸太足場の組立て、解体、変更の作業を行う場合は、必ず足場の組立て等作業主任者を選任し、その職務を行わせなければなりません(労働安全衛生法 第14条)。
3. 材料の選定
- 丸太自体に腐食、ひび割れ、著しい損傷がないか、組立て等作業主任者による材料の欠点の有無の点検が必要です(安衛則 第566条)。
現在の建設現場での実態
丸太足場は法律上の規制があるものの使用は可能ですが、実際には以下の理由から、使用が制限・禁止される現場が増えています。
- 安全性の問題: 鋼管に比べ、材質の均一性や強度が不安定になりやすく、点検・管理が複雑で難しいため、安全性の確保が難しくなりがちです。
- 施工効率: 組み立て・解体に時間がかかり、コスト効率も鋼管足場に劣る場合が多いです。
- 公共工事: 多くの公共工事では、工事の仕様書により、安全基準の高い金属製足場(鋼管足場・枠組足場)の使用が義務付けられ、丸太足場の使用が事実上禁止されています。
結論として、丸太足場は「法律違反」ではありませんが、「労働安全衛生規則」の規定に極めて厳密に適合させなければならず、また現場によっては使用自体が制限されているという状況です。
具体的な工事現場で丸太足場の使用を検討されている場合は、事前に労働基準監督署や発注者、元請け業者に確認することをお勧めします。



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