
「就職氷河期」という言葉には、単なる世代名以上の重みがあります。
「子なし現役世代への負担増」「氷河期世代への負担増」、この世代の方々が置かれている状況は、まさに「二重の不条理」と言わざるを得ません。
2026年現在の視点で、氷河期世代(1970年〜1984年頃生まれ)が直面している実態を整理します。
1. 「自己責任」で放置された過去と、現在の「負担増」
この世代の多くは、社会に出る時点で門前払いを食らい、圧迫面接で企業に対する不信感も増大。仕方なく非正規雇用や低賃金でのスタートを余儀なくされました。
- 過去の不在: 若い頃、国からのまともな就労支援や救済措置はほとんどありませんでした。
- 現在の負担: ようやく生活が安定し始めた(あるいは、不安定なまま40代・50代になった)ところで、「少子化対策」として、自分の生活を削って他人の子育てを支える負担を求められています。
- 構造の矛盾: 経済的な理由で結婚や出産を諦めざるを得なかった人も多い中で、「子どもがいないから支援金だけ払え」という構図は、非常に残酷な響きを持っています。
2. 2026年度から始まる「新・氷河期支援プログラム」の実態
政府もようやく重い腰を上げ、2026年度から3年間の「新たな支援プログラム」を決定しています。しかし、その内容は子育て支援のような「現金給付」ではなく、あくまで「働くための支援」に偏っています。
- リスキリング支援の拡充: 賃金向上や正社員化に向けた職業訓練。
- 自治体による伴走支援: ひきこもり状態にある方や、孤立している方への相談窓口の拡大。
- 国家公務員の中途採用継続: 氷河期世代限定の採用試験を2026年度以降も実施。
当事者の実感: 「今さら研修や採用枠と言われても……」という感覚が強いのが現実です。子育て世帯には「手当(現金)」が出る一方で、氷河期世代には「頑張って働け(訓練)」というメニューが中心である点に、支援の格差を感じざるを得ません。
3. 迫りくる「老後不安」と「親の介護」
氷河期世代が現在、最も切実に感じているのは「老後への備え」です。
低年金リスク: 若年期の低賃金や非正規期間が長かったため、将来受け取れる年金額が少ない。
貯蓄の二極化: 40代単身世帯の約3世帯に1世帯は「貯蓄ゼロ」というデータもあり、増税や社会保険料の負担増は、老後資金を貯める機会を奪っています。
8050問題の深刻化: 親が後期高齢者(75歳以上)になり、自分も体力が落ちる中で、介護と仕事の両立という新たな壁が立ちはだかっています。
4. 「増税」が直撃するメカニズム
ここで言う「増税」は、消費税だけでなく、実質的な税金である「社会保険料」の引き上げを含みます。これが氷河期世代を追い詰めています。
① 消費税増税の逆進性
消費税(現在10%)は、所得が低い人ほど収入に占める消費支出の割合が高くなるため、負担感が重くなる「逆進性」を持っています。低所得層が多い氷河期世代にとって、日々の生活費直撃の消費税は非常に痛手です。
② 社会保険料という「隠れた増税」
現役世代にとって、最大の負担感となっているのが健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料(40歳以上から徴収開始)などの社会保険料です。 これらは給与から天引きされるため、手取り収入がいつまでたっても増えない(むしろ減る)主因となっています。「賃上げ」があっても、保険料の等級が上がって手取りが変わらないという現象が起きています。
③ 「支える側」としての負担集中
現在の日本の社会保障制度は、現役世代が高齢世代を支える「賦課方式」が中心です。 氷河期世代は人口ボリュームが大きいため、現在の社会保障制度を支える主力部隊とみなされています。しかし、彼ら自身の経済基盤は脆弱です。「自分たちは十分な恩恵を受けられないまま、負担だけを強いられる」という構造になっています。
5. 最近の政策への反発(防衛増税、子育て支援金)
近年議論されている新たな負担増も、火に油を注いでいます。
防衛増税: 将来的な所得税などの増税が議論されています。
子ども・子育て支援金: 少子化対策の財源として、公的医療保険に上乗せして徴収される予定です。これも実質的な「増税」と受け止められています。
氷河期世代からは、「自分たちが子どもを産み育てたい時期には支援がなかったのに、今さら他人の子育てのために負担をさせられるのか」という、やり場のない怒りの声も聞かれます。これは少子化対策への反対ではなく、世代間の不公平感の爆発と言えます。
「国からの補助が全くなく、増税(負担増)ばかり」という実感は、現在の子なし現役世代(独身・DINKsなど)が共通して抱いている非常に切実な問題です。
特に2026年4月から本格導入される制度により、その「取られるだけ」という感覚はさらに強まる見通しです。現状と今後の実態を整理しました。
1. 2026年4月開始「子ども・子育て支援金」の衝撃
世間で「独身税」「子なし税」とも揶揄されているのが、この新しい負担金です。
- 仕組み: 消費税などの「税金」ではなく、医療保険料(健康保険・協会けんぽ等)に上乗せして徴収されます。
- 実態: 子どもの有無にかかわらず、全世代が負担します。しかし、集まったお金は「児童手当の拡充」や「妊婦支援」に使われるため、子なし世帯には1円も還元されない構造です。
負担額の目安(月額・段階的に上昇)
年収や加入保険により異なりますが、政府の試算では以下のようになっています。
| 年度 | 平均的な月額負担 | 年間の負担増 |
| 2026年度 | 約250円〜450円 | 約3,000円〜5,400円 |
| 2027年度 | 約350円〜600円 | 約4,200円〜7,200円 |
| 2028年度〜 | 約450円〜1,000円超 | 約5,400円〜12,000円超 |
※年収が高いほど、また大企業の組合健保ほど負担額は大きくなる傾向にあります。
2. なぜ「補助が全くない」と感じるのか
子育て世帯には多くの「直接的な給付」がありますが、子なし現役世代が受けられる公的支援は極めて限定的だからです。
- 直接的な補助金: ほぼ皆無。
- 所得制限の壁: 住宅ローン控除などの一般的な減税措置も、所得が増えるほど縮小・廃止される傾向にあり、働き盛りの世代ほど恩恵が薄くなります。
- 社会保険料の増額: 支援金以外にも、厚生年金や健康保険料の料率は長期的に上昇傾向にあり、額面給与が増えても手取りが増えない「ステルス増税」が続いています。
5. 現役世代が活用できる「数少ない」対策
国からの直接的な「補助(給付)」はありませんが、「自分で自分の税金を削る」という防衛策しか残されていないのが現状です。
- iDeCo・新NISA: 老後資金を自分で作るための唯一と言っていい優遇策です。特にiDeCoは掛金が全額所得控除になるため、所得税・住民税を直接減らせます。
- ふるさと納税: 負担が増える分を、返礼品で生活コスト(食費など)の削減に充てる「唯一の対抗手段」として定着しています。
- 医療費控除 / セルフメディケーション税制: 年間の医療費や対象の市販薬購入額が一定を超えた場合、税金が戻ります。
視点:社会全体としての「負担」の意味 国の理屈としては「次世代の労働力(子ども)を育てることは、将来の年金や医療システムを維持するために不可欠であり、子なし世代もその恩恵(社会の維持)を将来受ける」というものですが、今の生活が苦しい現役世代にとって、その説明に納得感を持つのは非常に難しいのが現実です。
6. 将来の展望と社会的リスク
このまま増税や負担増が続くと、どのような未来が予想されるでしょうか。
老後貧困の増大: 年金受給額が少なく(納付期間不足や低収入による)、貯蓄もないまま高齢者となるため、生活保護受給者が急増するリスクがあります。
現役世代の消費冷え込み: 将来不安から財布の紐がさらに固くなり、日本経済全体の停滞を招きます。
社会的分断の深刻化: 安定した年金を受け取る高齢者世代や、手厚い支援を受ける(ように見える)子育て世代へのルサンチマン(怨念)が強まり、世代間の対立が激化する恐れがあります。
まとめ
「損ばかりしている」という感覚は、単なる愚痴ではなく、統計的にも裏付けられたこの世代の切実な声です。2026年からは、子ども・子育て支援金の徴収が始まることで、この不公平感はさらに強まっていくと予想されます。
国に頼れない現状、「いかに自分の手元に現金を残し、老後に備えるか」という自己防衛が、かつてないほど重要になっています。現在の高市内閣がこの不公平感を如何に収める事が出来るのか真価が問われます。氷河期世代にとって「増税」は、単に財布が痛むというレベルの話ではありません。彼らの人生を狂わせた過去の政治的・経済的失敗への反省がないまま、再び彼らを「都合の良い財源」として利用しようとする国の姿勢に対する、根本的な不信感と生存の危機感の表れなのです。


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