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階段地獄な名古屋の地下鉄

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名古屋地下鉄バリアフリー化の遅れ

名古屋の地下鉄で「階段を上っている途中にだけエスカレーターがある(最初と最後は階段)」という奇妙な構造を見かけることがありますが、これには古い時代の設計基準と、物理的な「深さ」の限界が深く関わっています

名古屋の地下鉄で「エスカレーターが途中で終わっている(または一部にしかない)」現象には、主に建設当時の古い設計基準と、物理的なスペースの制約という2つの大きな理由があります。

1. 建設当時の「5メートルルール」

名古屋の地下鉄の多く(特に東山線や名城線の古い区間)は、現在のようなバリアフリー法ができる前に建設されました。当時の設置基準は、主に以下のようなものでした。

  • 高低差の基準: かつては「高低差が5メートル以上ある場合にエスカレーターを設置する」といった基準が一般的でした。
  • 「途中まで」の正体: 例えば、ホームから改札口までは深いので設置されるが、改札口から地上までは数メートルしかない場合、基準に満たないとして階段のみになるケースが多くありました。
  • 基準の解釈: 例えば、ホームから地上までの総高低差が7メートルある場合、そのうちの「一番長い5メートル以上の区間」にだけエスカレーターを設置し、残りの短い区間(踊り場から地上など)は「自力で歩ける範囲」として階段のまま残されました。
  • 結果: この「5メートルを超えた分だけ機械で助ける」という考え方が、現在の視点で見ると「なぜここで終わるの?」という不自然な構造を生んでいます。

2. 物理的・構造的な制約

後からエスカレーターを付け足そうとしても、以下の理由で困難な場合があります。

  • 通路の幅: エスカレーターを1基設置するには、階段を大幅に削るか、通路を広げる必要があります。しかし、地下鉄の出口は歩道の幅上の建物の基礎に制限されており、物理的に広げられない場所が多々あります。
  • 地上の権利関係: 出入口が民間のビル内にあったり、歩道が狭すぎたりする場合、市の一存では工事ができません。

3. 法律による「高さ」の制限(30度・35度の壁)

日本の建築基準法では、エスカレーターの傾斜角度によって、一度に上れる高さ(揚程)に制限があります。

  • 勾配が30度の場合: 高さの制限は特にありませんが、長くなればなるほど強大なモーターと頑丈な構造が必要になります。
  • 勾配が35度の場合: スペースを節約するために角度を急にする場合、**「高さは6メートル以下」**にしなければならないというルールがあります(平成12年建設省告示第1413号)。
  • 理由: あまりに高い(長い)エスカレーターで角度が急だと、利用者が転落した際の危険性が増し、心理的な恐怖感も強くなるためです。

4. 「水平距離」という物理的な制約

エスカレーターは階段よりも多くの「横方向の長さ」を必要とします。

  • 計算の仕組み: 30度のエスカレーターで10メートルの高さを上がろうとすると、斜面部分だけで約17メートル、さらに上下の乗り降り口(水平部分)を含めると20メートル以上の直線距離が必要になります。
  • 地下鉄の限界: 名古屋のような都市部の地下鉄は、階段の上がすぐ道路だったり、重要な配管(下水道やガス管)が通っていたりします。20メートルもの直線スペースを確保できない場合、**「一部だけをエスカレーターにして、残りは階段で角度を調整する」**という設計にならざるを得ません。

5. 「機械を埋めるスペース(ピット)」の不足

エスカレーターを設置するには、上下の両端に大きな駆動装置を埋め込むための**「ピット(深さ1〜2メートル程度の穴)」**を掘る必要があります。

  • 障害物の存在: 地下鉄の階段の下や上には、電気配線、水道管、さらには地下鉄自体のトンネル構造物などが密集しています。
  • 妥協の産物: 「ここから先もエスカレーターにしたいが、これ以上深く掘ると重要な配線を切ってしまう、あるいはトンネルの天井にぶつかる」という場所では、物理的に設置が可能な中間部分だけにエスカレーターを押し込む形になります。

6. 「バリアフリー1ルート」の優先順位

現在のバリアフリー施策では、エスカレーターよりも**「エレベーターによる1ルート(ホームから地上まで)」**の確保が最優先されています。

  • 限られた予算とスペース: 狭い駅にエスカレーターとエレベーターの両方を新設するのは難しいため、車椅子やベビーカー利用者が「自力で移動できる」ことを保証するためにエレベーター設置が優先されます。
  • 結果としての不便: そのため、健康な人や足腰が少し不安な人にとっては「エスカレーターがなくて不便(遅れている)」と感じる状況が生じています。

7. メンテナンスと「踊り場」の役割

非常に長いエスカレーターは、故障した際の修理が大変で、万が一の事故の際の被害も大きくなります。

  • 分割のメリット: 長い高低差がある場合、あえて途中で切り離して「階段+踊り場」を挟むことで、人の流れを一度リセットし、滞留を防ぐ安全上の役割を持たせることがあります。

8. 名古屋特有の事情:東山線の古さ

名古屋で最も利用者が多い東山線は、日本で3番目に古い地下鉄(1957年開業)です。

  • 当時はバリアフリーの概念がほぼなく、トンネル自体も非常にコンパクトに作られました。
  • そのため、ホームが狭く、エスカレーターを設置すると人の滞留が起きて逆に危険になる駅もあり、設置が進まない要因となっています。
  • また、障害物を避けるための「ミニ階段」が各所にあり、それを改善するための「ミニエレベータ」設置と、コストが高い

今後の動き

名古屋市交通局では現在、以下の対応を進めています。

  • エスカレーターの増設: スペースが確保できる箇所から順次進めていますが、非常に時間がかかる作業です。
  • 「立ち止まり」の義務化: 既存のエスカレーターを効率よく、安全に使うために全国に先駆けて条例を施行しました。

[!NOTE] エスカレーターが「上りしかない」理由は、到着した電車から降りる大量の乗客を速やかにホームから逃がし、**転落や圧迫事故を防ぐ(安全確保)**という目的が優先されているためです。

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