
メガソーラー支援廃止の背景
2025年12月14日、政府・自民党が「新規メガソーラーへの支援(買取価格の上乗せ)を2027年度から廃止する方針」を固めたというニュースが報じられています。「消費者が支払う再エネ賦課金が原資となっていること」が、今回の廃止決定の最大の理由の一つです。以下に、ポイントと背景を整理します。
決定内容のポイント
- 対象: 新規の大規模太陽光発電所(メガソーラー)
- 変更時期: 2027年度(令和9年度)から
- 変更内容: 従来の「FIP制度」などで認められていた売電価格への「プレミアム(補助金)」の上乗せを廃止します。
- 結果: 2027年度以降に参入する新規メガソーラー事業者は、国からの支援(国民負担による補填)を受けられず、純粋な市場価格のみでビジネスを行う「完全な自立」が求められることになります。
なぜ廃止されるのか(背景)
主な理由は以下の2点です。
① 国民負担(再エネ賦課金)の抑制 ご指摘の通り、再エネ事業者への支払いは、電気を利用する全消費者が毎月の電気代に上乗せして支払う「再エネ賦課金」で賄われています。
- 太陽光発電はすでにコストが下がっており、「これ以上、国民負担で利益を保証する必要はない」という判断です。
- 賦課金の上昇を抑え、電気代を下げる狙いがあります。
② 環境・地域トラブルの防止
- 山林を切り開いて設置されるメガソーラーによる土砂崩れや、景観悪化などのトラブルが各地で多発しています。
- 「儲かるから作る」という安易な開発を抑制し、環境破壊につながる乱開発に歯止めをかける目的もあります。
再エネ賦課金(さいエネふかきん)とは

正式名称を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といい、私たちが使う電気の量に応じて、毎月の電気代に上乗せして支払っている「負担金」のことです。
先のニュースで「廃止」が決まったのは、この賦課金が増え続けるのを防ぐための措置で、私たちの家計にどう関わっているのでしょうか。
毎月の支払い額(計算式)
私たちは、電気を使った量(kWh)に応じて、以下の計算式で支払っています。
再エネ賦課金 = 1ヶ月の電気使用量 (kWh) × その年度の単価 (円/kWh)
- 誰が払う?: 一般家庭から大企業まで、電気を使うすべての人です。
- いくら払う?:
- 例えば、標準的な家庭(月260kWh使用)の場合
- 2024年度(単価3.49円):月額 約907円
- 2025年度(単価3.98円):月額 約1,035円
- ※単価は年度ごとに経済産業大臣が決定します。
なぜ支払う必要があるのか
電力会社が「FIT/FIP制度」に基づいて、再エネ事業者から電気を「高く」買い取っています。その「高い買い取り費用」の元手が、私たちから集めた再エネ賦課金です。つまり、「日本の再エネを増やすためのコストを、国民全員で少しずつ分担している」という仕組みです。
現行のFIP制度(フィード・イン・プレミアム)
1. FIP制度の「プレミアム」の仕組み
FIP制度では、事業者が受け取る収入は「市場で売ったお金」と「国からもらえる補助金(プレミアム)」の合計になります。
従来(FIT)のような「固定価格」ではなく、市場価格に連動して収入が変動しますが、下がりすぎないように「基準となる目標価格(FIP価格)」まで国が補填する仕組みです。
【計算式】

基準価格(FIP価格): 「再エネ事業を続けるにはこれくらい収入が必要だよね」と国が決めた目標金額(FIT価格と同水準)。
- 参照価格: 市場価格の平均値(市場で売ったらいくら儲かるかの目安)。
- プレミアム: 上記2つの差額。「目標額に足りない分」を国が補填します。
なぜ「上乗せ」廃止がニュースなのか?
これまでは、市場価格が安くても「プレミアム」があるおかげで、事業者は目標額(基準価格)に近い収入を確保できました。しかし、2027年度以降の新規メガソーラーではこの「プレミアム」がゼロになるため、事業者は市場価格だけで勝負しなければならなくなります。
なぜ単価が上がったり下がったりするのか?(重要)
ここが少し直感と逆になるので重要です。
再エネ賦課金の単価は、「世の中の電気代(市場価格)が安いと、逆に高くなる」という性質があります。
- 仕組み:再エネ事業者に支払う「約束した金額(高い)」と、電力市場の「普通の電気代(変動)」との差額を賦課金で埋めています。
- 燃料費が高いとき(電気代が高いとき):普通の電気代が高いので、差額(埋める分)が少なくて済む ➡ 賦課金は下がる
- 燃料費が安いとき(電気代が安いとき):普通の電気代が安いので、差額(埋める分)がたくさん必要になる ➡ 賦課金は上がる
最近の例:
2023年度は、ウクライナ情勢などで燃料費が高騰したため、賦課金単価は「1.40円」まで下がりました。しかし、2024〜2025年度は燃料費が落ち着いたため、逆に賦課金単価は「3円台後半」へと跳ね上がっています。
これまで、再エネ設備(特にメガソーラー)が増えれば増えるほど、この賦課金の負担は重くなってきました。
そこで政府は、「これ以上、国民の負担(賦課金)を増やさないために、新規のメガソーラーにはもう補助(上乗せ)を出さない」と決めたのです。これが今回のニュースの核心です。
今後の影響
これまでは「作れば国が(国民の負担で)買い取ってくれる」という仕組みでしたが、今後はその保証がなくなります。
- 事業者への影響: 売電収入の保証がなくなるため、単にパネルを並べるだけのビジネスモデルは成立しなくなります。今後は、企業と直接契約して電気を売る「コーポレートPPA」や、蓄電池を併設して需給調整を行うなど、高度な経営判断が求められます。
- 消費者への影響: 将来的に、電気代に含まれる再エネ賦課金の上昇ペースが緩やかになる(あるいは下がる)ことが期待されます。
この変更は、太陽光発電が「保護される産業」から「自立した産業」へと完全に移行することを意味します。
再生可能エネルギー普及政策のこれまで
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受け、2012年度には民主党政権が「再生可能エネルギー支援制度」を導入し、新しいエネルギー政策が動き出しました。この制度により、電力会社は再エネ事業者から電力を高値で買い取る仕組みとなり、再生可能エネルギーの普及が一気に加速しました。メガソーラーもそうした中で普及を促され、大規模な施設が全国で建設されるようになりました。特に、新規メガソーラーの建設は、エネルギーの脱炭素化に向けた象徴的な取り組みとされてきました。
環境破壊問題と市民の反発
一方で、メガソーラーの急速な普及に伴い、様々な問題が顕在化しました。大規模な太陽光発電施設を設置するには、山林の伐採や土木工事が不可避であり、その結果として生態系の破壊や景観の悪化が指摘されています。さらに、釧路湿原国立公園周辺や千葉県鴨川市などでは、地域住民と事業者との間でトラブルも続出しています。このような状況から、「再生可能エネルギーで環境を守る」という理念が、逆に環境破壊を招いているという批判が高まり、政策の方向性を見直すきっかけとなりました。
再エネ賦課金の役割とその負担
現在、メガソーラーをはじめとする多くの再生可能エネルギー事業は、消費者が負担する「再エネ賦課金」を財源としています。この賦課金は電気料金に上乗せされる形で徴収され、メガソーラー事業の電力買い取り価格の差額を補填するために使用されます。しかしながら、2025年度までの再生可能エネルギー電力の買い取り総額は4.9兆円に達すると見込まれ、そのうち3.1兆円が再エネ賦課金で賄われています。特に、メガソーラー関連の支払いが全体の6割を占めていることから、その負担の大きさが一般消費者にとって問題視されています。
政府の新しい方向性とその狙い
再エネ賦課金による消費者負担の増大やメガソーラーを取り巻く環境問題を受けて、政府と自民党は2027年度から新規メガソーラー事業への支援を廃止する方針を固めました。これにより、電力買い取り価格への上乗せ支援を終了させ、再エネ賦課金の削減を目指す構えです。また、環境影響評価の厳格化を予定し、メガソーラー拡大への歯止めをかける方針も打ち出されています。この政策転換は、再生可能エネルギーの持続可能な利用を目指す一環とされ、例えば屋根設置型や家庭用設備は引き続き支援されるため、分散型エネルギーへの移行を強調した内容となっています。
2027年度以降の政策変更が与える影響
電力事業者への影響
電力事業者にとって、新規メガソーラー支援の廃止は大きな転換点となります。特に、これまで「再生可能エネルギー支援制度」に依存していた事業者にとっては、新規事業の採算性が課題となる可能性があります。再エネ事業者は、従来、電力買い取り価格の上乗せ部分が支援される仕組みに助けられていましたが、その原資である「再エネ賦課金」が削減または再配分されることにより、市場環境が大きく変わることが予想されます。一方で、大規模メガソーラー以外の事業、例えば屋根設置型の事業用設備や家庭用設備へのシフトが進む可能性もあります。この変化に対応できるかどうかが、各事業者の生き残りを左右する大きなポイントとなるでしょう。
電力消費者の負担はどう変わるのか
「再エネ賦課金」が電気料金上の負担として国民に上乗せされていた点が、新たな政策変更でどう変わるかは注目されています。現在、再エネ賦課金は約3.1兆円と試算されており、その約6割がメガソーラーを含む事業用太陽光発電に使われています。新規支援の廃止により、賦課金が削減されることが期待される一方で、支援体制の見直しがどの程度電力料金に反映されるかについては依然不透明です。特に、電力消費者である家庭や企業が「恩恵」を実感できるかどうかが課題となりそうです。この負担軽減が実現される場合、再エネ政策への理解や支持が広がる可能性もあります。



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