
パーキンソン病とはどんな病気か
パーキンソン病に罹患していることを公表した歌手の美川憲一さん(79)が10日、都内で会見を開催し、病状を報告した。50代の我々にも他人ごとではありません。このパーキンソン病とはどんな病気なのか、罹患しないためには何が良いのか、考えてみたい
パーキンソン病の概要と定義
パーキンソン病は、主に脳内で神経細胞が障害を受けることで進行する神経変性疾患です。この病気は中高齢者に多くみられ、特に50~65歳での発症が一般的とされています。主な症状としては、手足の震え(振戦)、筋肉のこわばり(筋固縮)、動きが遅くなること(運動緩慢)、転びやすくなる姿勢反射障害が挙げられます。一度発症すると完治が困難なため、早期発見と適切な治療が重要です。現在、日本国内のパーキンソン病患者数は約28万9000人と報告されており、進行する高齢化社会とともに患者数の増加が懸念されています。
発症の仕組みと脳内の変化
パーキンソン病は、脳内の「黒質」と呼ばれる部分でドーパミンを分泌する神経細胞が減少することで発症します。ドーパミンは体の動きを滑らかにコントロールする役割を担っていますが、その量が正常の20%以下にまで減少すると、症状が現れるとされています。また、脳内で異常なたんぱく質であるα-シヌクレインが蓄積し、神経細胞にダメージを与えることも発症の一因と考えられています。これらの要因が重なり合い、神経伝達に影響を与えてしまうのです。
発症リスクを高める要因
パーキンソン病の発症には加齢が関係していますが、生活習慣や環境要因もリスクを高めると言われています。特にストレスの多い生活や運動不足、偏った食生活はリスクを高める可能性があります。また、農薬や化学物質への暴露や、特定の遺伝的要因も関連している場合があります。一方で、カフェインの摂取や適度な運動はパーキンソン病を防ぐには効果的とされています。
パーキンソン病が指定難病である理由
パーキンソン病は「指定難病」として認定されています。その理由は、進行性でありながら直接的な原因の特定が難しく、効果的な根治療法が未だ見つかっていないことにあります。また、診断や治療には専門医の関与が必要であり、治療費負担が高額になりうるため、患者とその家族が経済的・精神的に深刻な影響を受ける場合が多いのです。このような背景から、国の医療福祉制度の支援を受ける対象になっているのです。
どうすれば罹患可能性を抑えられるのか
パーキンソン病の確実な予防法は、現状まだ確立されていません。
しかし、病気の発症リスクを減らしたり、進行を遅らせることにつながると考えられている健康的な生活習慣がいくつかあります。これらは、主に脳内のドーパミンの分泌を促し、神経細胞を守ることを目指しています。
一般論ですがまとめてみました。
運動習慣を持つ
適度な運動は、筋力低下を防ぎ、ドーパミンの分泌を増やす効果があるとされています。
- 有酸素運動:散歩(1日8,000歩目安など)、ジョギング、水泳、テニスなど。
- 柔軟体操・ストレッチ:体が硬い人はパーキンソン病になりやすい傾向があるため、柔軟体操は効果的です。
- 筋力トレーニング:特に体幹や背筋群の強化を意識し、無理のない範囲で行うことが大切です。
- 継続することが最も重要です。自分に合った方法を見つけて習慣化しましょう。
食生活を見直す
栄養バランスの取れた食事は、病気のリスク軽減につながると考えられています。
- 抗酸化作用のある食品:緑茶(カテキン)、ブルーベリー(アントシアニン)、赤ワイン(レスベラトロール)など、抗酸化物質を含む食品は、神経細胞の酸化ストレス軽減に役立つ可能性があります。
- カフェインを含む飲料:コーヒーや紅茶を定期的に飲む人は、飲まない人に比べて発症リスクが低いという研究結果があります。
- 地中海式食事:魚、オリーブオイル、野菜、果物、ナッツ、全粒穀物を中心とした食事は、神経保護効果が期待されています。
- 良質なタンパク質:魚や大豆製品などから、筋肉維持に必要なタンパク質をバランスよく摂取しましょう。
- 便秘対策:パーキンソン病では便秘になりやすいため、食物繊維が豊富な食品(野菜、海藻、豆類など)や、十分な水分補給を心がけましょう。
- 注意点:動物性脂肪を多く含む食べ物や、大量の砂糖を含む食べ物の過剰摂取は避けることが望ましいとされています。
ストレスを管理し、社会的なつながりを持つ
精神的な健康もドーパミンの分泌に関係しています。
- ストレス発散:好きなことや得意なことに取り組み、目標を達成する喜びや満足感を得ることは、ドーパミンの分泌を活性化します。
- 社会的な交流:人との会話や地域のコミュニティ活動、趣味のグループに参加するなど、外部の人々との交流を通じて楽しさを共有し、脳に刺激を与えることが重要です。
- 十分な睡眠:規則正しい睡眠時間を確保することも、心身の健康維持に欠かせません。
これらの生活習慣は、パーキンソン病だけでなく、一般的な健康維持にも役立つものです。
ご自身の健康状態や体調に合わせて、無理のない範囲でこれらの習慣を取り入れてみてください。具体的な運動や食事については、医師や管理栄養士などの専門家に相談することをおすすめします。
早期発見が重要な理由
早期発見のメリット
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり、発症後に症状が悪化していく特性があります。そのため、早期発見が極めて重要です。早期に診断を受けることで、進行を抑えるための適切な治療やリハビリテーションを始める機会が得られます。また、症状をコントロールすることで日常生活への支障を軽減し、仕事や家庭での役割をこれまで通り果たせる可能性が高まります。パーキンソン病を防ぐには早期に対処を始めることが鍵となります。
パーキンソン病の初期症状を見分ける方法
典型的な運動症状
パーキンソン病の初期症状として、主に運動に関する変化が現れることが多いです。例えば、安静時振戦(体を動かしていない状態でも手や指が震える症状)が典型的です。この振戦は最初は片側の手や足から始まり、徐々に両方に広がることがあります。また、筋肉が固まり動きが困難になる「筋固縮」や、動作が遅くなる「運動緩慢」、さらにバランスを崩しやすく転びやすい「姿勢反射障害」も初期の運動症状としてよく見られます。これらの症状は徐々に進行する特徴があり、早期発見が非常に重要です。
非運動症状にも注意
パーキンソン病は運動症状だけでなく、非運動症状も初期段階から見られる場合があります。例えば、消化器系の不調による慢性的な便秘や嗅覚の低下、自律神経の乱れによる姿勢性低血圧などが挙げられます。また、睡眠障害やうつ病、不安感などの精神的な症状が現れることもあります。これらの非運動症状は見過ごされがちですが、パーキンソン病の兆候として重要です。特に、高齢者ではこれらの症状が他の加齢現象と混同されやすいため、慎重に観察する必要があります。
専門医による診断の重要性
パーキンソン病を防ぐには早期の専門医の診察が欠かせません。運動症状や非運動症状が現れても、それだけでパーキンソン病と断定することは難しく、専門医による正確な診断が必要です。特に、パーキンソン病ではドーパミン減少の程度を把握し、他の神経疾患との識別を行うことが重要です。専門医による診断では問診や神経学的検査の他、必要に応じてMRIやDATスキャンといった検査が用いられます。これにより正確な診断を行い、専門的な治療計画を立てることが可能になります。
まとめ
パーキンソン病の症状は、他の神経疾患と類似している場合が少なくありません。例えば、脳血管障害や進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症なども振戦や運動緩慢といった症状を伴うことがあります。そのため、これらの疾患とパーキンソン病を区別することは非常に重要です。誤った診断が下された場合、適切な治療を受けられず、症状が進行してしまう恐れがあります。少しでも異変を感じた場合は早めに医療機関を受診し、専門医の判断を仰ぎましょう。


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