
傷病手当金が「思ったより少ない」と感じる主な理由と注意点
支給条件は
傷病手当金について、「思ったより少ない」と感じる方が多いのには、いくつか理由と注意点があります。
1. 支給額の計算方法によるもの
傷病手当金の日額は、給与の全額ではありません。
- 計算式:1日あたりの支給額= (支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30) ×2/3
- 注意点: ざっくり言うと、休む前の給与(標準報酬月額)のおよそ3分の2の金額になります。給与の満額を受け取れるわけではないため、「少ない」と感じる最大の理由です。
2. 給与との調整(減額)
- 注意点: 休業中に会社から給与や手当(通勤手当、住居手当、固定残業手当など)が支払われた場合、傷病手当金はその分減額または不支給になります。
- 支給された給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
3. 他の公的給付との調整(減額・不支給)
- 注意点: 傷病手当金と同時期に、老齢退職年金、障害年金、労災保険の休業補償給付、出産手当金などの公的給付を受けている場合、原則として傷病手当金は支給されなかったり、差額が支給されたりします。
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)
計算の仕組み
傷病手当金を受給している間も、会社に在籍している限り、社会保険料の支払いは免除されません。
- 保険料の算定基準:
- 休職前の標準報酬月額を基に計算されます。
- 傷病手当金(給与の約2/3)を基に計算されるわけではありません。
- 標準報酬月額とは:
- 毎月の給与などの報酬の平均額を区切りの良い等級に当てはめた金額です。
- この金額に各保険の保険料率をかけて、毎月の保険料が算出されます。保険料率は、加入している健康保険組合や協会けんぽ、お住まいの地域によって異なります。
支払い方法の注意点
傷病手当金は「給付金」であり、「給与」ではないため、原則として社会保険料は傷病手当金から自動で天引きされません。
- 会社との取り決めが必要:
- 毎月、本人から会社に銀行振込などで支払う。
- 復職時に、休職期間中の社会保険料をまとめて精算する。
- (会社と合意の上で)傷病手当金の受取口座を会社にして、社会保険料を差し引いた額を本人に振り込んでもらう。
住民税
計算の仕組み
住民税は、「前年(1月1日~12月31日)の所得」に対して計算され、その金額が翌年6月から翌々年5月までの12ヶ月間にわたって課税されます。
- 課税の対象:
- **傷病手当金自体は「非課税所得」**であり、傷病手当金には住民税はかかりません。
- しかし、住民税の金額は休職前の前年の高い所得に基づいて計算されているため、休職して収入が減っても、支払い義務は継続します。
- 翌年以降の影響:
- 傷病手当金のみで過ごした年の所得は低くなるため、その翌年(翌々年6月以降)に課税される住民税は大きく安くなる(または非課税になる)見込みです。
支払い方法の注意点
住民税の徴収方法には、「特別徴収」と「普通徴収」があります。
| 徴収方法 | 概要 | 休職中の対応 |
| 特別徴収 | 会社が毎月の給与から天引き(控除)し、市区町村に納付する。 | 給与が無くなると天引きできなくなります。会社に支払方法の確認が必要です。 |
| 普通徴収 | 市区町村から自宅に納付書が送付され、本人が金融機関などで直接納付する。 | 退職した場合や、会社が特別徴収から切り替えた場合にこの方法になります。 |
休職中は、会社が特別徴収を継続する場合(社会保険料と同様に会社に支払う)、または普通徴収に切り替えて本人が直接納付する場合のどちらかになります。必ず勤務先の人事・総務担当者に確認してください。
その他の重要な注意点
- 待期期間: 傷病手当金は、療養のために連続して3日間休んだ後、4日目から支給が開始されます(最初の3日間は「待期期間」として支給対象外)。
- 支給期間: 支給開始日から通算して1年6ヶ月が限度です。
- 退職後の継続給付:
- 退職日に被保険者期間が1年以上あり、かつ退職日に傷病手当金の支給を受けているか、受ける条件を満たしている必要があります。
- 退職日に出勤してしまうと、継続給付の条件を満たさず、受給できなくなるので注意が必要です。
傷病手当金を受給する際は、社会保険料と住民税の支払いについて、勤務先(または加入している健康保険組合)と事前に確認し、支払い方法を取り決めておくことが非常に重要です。


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